しばらくすると僕は塔のてっぺんの屋根の上に立っていました。

塔の上はごうごうと風が吹いていました。今にも体が屋根から離れて飛ばされてしまいそうです。

下では大入道が応援しています。なぜかバッタの姿は見えません。

これを登らないと帰ることが出来ない、それだけを考えながら僕はポールに手をかけて、登って行きました。

頂上に近づくにしたがって、物見高いカラスたちが一羽二羽と増えていきました。

やがてカラスたちは僕の周りを円を描いて飛び始めました。

「落ちたらどうなる?」

「落ちたらどうなる?」

「見たい」

「見たい」

カラスたちが目配せしあっているのが分かりました。

「3」

「2」

「1」

カラスたちは合図とともに一斉に襲い掛かってきました。

黒いくちばしが僕の頭や体、足や手をつつき回します。

「あっ!」

うっかり手を放してしまいました!

どんどん落下します。

ひゅ

ストン

受け止めてくれたのはバッタ君でした。

受け止めてくれたバッタ君の前足は、後ろ足と同じように太く力強くなっていました。

「短い時間だったけど、楽しかったよ。」

「僕もさ!」

「それじゃあ、さよなら!」

「あ、ありがとう!」

「またね!!」

そう言うとバッタ君は僕を思い切り、高く高く投げ上げました。

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